細胞に刺激が加わって、脱分極が起こり、細胞内にカルシウムイオンが流入することが、筋肉の収縮、神経伝達物質放出や、ホルモン分泌など様々な細胞応答のスイッチになっている。このようなカルシウムイオン依存性の情報伝達をカルシウムシグナリングと呼ぶ。この情報伝達系の精度は、細胞内外のカルシウム濃度差(1万:1)によって保たれている。細胞外カルシウム濃度の急激な上昇(カルシウムパラドクス)や、細胞内から細胞外へカルシウムイオンをくみ出すポンプの不調(ATP不足など)により、この濃度差は以外と簡単に崩れてしまう。スイッチがはいなければ、疲労、ホルモン分泌低下(糖尿病など)を起こし、スイッチが入りっぱなしだと、不整脈、うつ病(例えばグルタミン酸神経過剰興奮)を引き起こす。(NMDA型グルタミン酸受容体は通常不活性で、細胞外からのマグネシウムイオンがこの受容体の活動を阻害しているため。マグネシウム欠乏下では受容体の抑えが効かなくなり、グルタミン酸の神経毒性によりうつ病が引き起こると言われている。)