ビタミンAは 1900 年代の初めに、眼球乾燥症に効果のある物質として同定された。目の乾燥を防ぐための物質だと考えられていたビタミンAが突如がんの特効薬としての脚光を浴びたのは1980年代。天然物では特許の取得はできないので、レチノイン酸と同等の効果をもつ誘導体を開発する必要があり、開発されたレチノイン酸が臨床応用された。白血病は、造血幹細胞から作られる白血球細胞が分化の途中で止まってしまい、増殖する病気。特に前骨髄球性白血病の場合、遺伝子異常のために、レチノイン酸が働いても分化のスイッチが入りにくい。そこで、分化を高めるためにレチノイン酸製剤が使用された。合成レチノイン酸は、分化のスピードを早めてくれる。これは、分化誘導と命名され、現在でも前骨髄球性白血病に対して第一選択となっている。