鉄が腸粘膜から吸収されるためには、まず腸粘膜細胞の中に取り込まれる必要があり、そのためにはイオン化されるもしくは、キレート化されるの2つの方法がある。
・イオン化する
 鉄元素はイオン化されてはじめて細胞膜のイオンチャンネルを通過できるようになる。鉄は通常Fe3+(酸化型)をとっており、還元してFe2+(還元型)にすると、鉄がイオン化しやすくなる。
 もしくは、pHを下げると、鉄がイオン化しやすくなる。還元するためにはビタミンCなどの抗酸化剤、pHを下げるためには胃酸が重要。
・キレート化する
 キレートアイアン、もしくは天然のキレート鉄であるヘム鉄を使用することで、吸収率は格段によくなる。臨床の現場では、ヘム鉄にさらにビタミンCを加えることで吸収を良くする。
2.炎症がある場合は、まず炎症を抑える。炎症下では、ヘプシジンにより鉄吸収が抑制される。腸や上咽頭炎、脂肪肝などは特に見逃されやすい炎症。
3.カンジタ感染がある場合は、まずカンジタを治療する。鉄の投与がカンジタ増殖を引き起こす可能性がある。
カンジタなどの真菌類は、ヒトと同じ真核生物であり、類似点が多く指摘されている。鉄はヒト細胞の代謝や、ミトコンドリア機能の維持に重要な働きを担っているが、 同様に真菌細胞においても不可欠な存在。 真菌は、免疫低下時(抗ガン剤治療時など)に、消化管から血管に移動して増殖する事が知られている。 真菌の生育において、消化管内の遊離鉄濃度は充分なのに対して、血中の遊離鉄濃度は、フェリチン、 トランスフェリンなどのタンパクに捕捉されるため非常に低くなっている。そのため、真菌は血中の赤血球、トランスフェリンやフェリチンから鉄を奪取するという 取込機構を持っており、 鉄サプリメントの摂取がカンジタ感染の危険を増大するという報告もある。
遊離鉄に結合する働きのあるラクトフェリンをうまく使うのがよい。